室温硬化コーティング剤原料
コーティング剤の原料として使用可能で、空気中の湿気と反応し室温硬化するシリコーンオリゴマー製品をご紹介します。
シリコーンオリゴマーを原料にしたコーティング剤は、高硬度で透明性が高く耐候性のある被膜を形成し、撥水性、滑水性に優れるため基材の美観の維持に寄与します。
特長とコーティング層のイメージ
高透明で硬く、撥水防汚性のある被膜を形成する
シリコーンオリゴマーとは
3次元架橋したシロキサン骨格を持ち、比較的低分子のシリコーンのことを信越化学ではシリコーンオリゴマーと呼んでいます。その中でも、反応性官能基としてアルコキシシリル基のみを持つタイプAの製品群が室温硬化コーティング剤の原料として主に使用されています。
タイプA シリコーンオリゴマーの硬化機構
室温硬化が可能
アルコキシシリル基は、硬化触媒を併用すると空気中の湿気により脱アルコール縮合し、室温で硬化被膜を形成します。
無溶剤
ほとんどの製品がシリコーン有効成分100%で溶剤を含まないため、適用可能なアプリケーションが豊富です。
相溶性良好
低分子のため相溶性が良好で、必要特性に応じてシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー同士の配合が可能です。
シリコーンオリゴマー(タイプA)の持つ性能
高硬度
シリコーンオリゴマーは、主に下記に示す3官能(T単位)からなり、硬化すると3次元網目構造を形成します。
この3次元網目構造は、無機ガラスを構成する4官能(Q)単位に次いで架橋密度が高くなることから、高硬度となります。
1官能性 (M単位) |
2官能性 (D単位) |
3官能性 (T単位) |
4官能性 (Q単位) |
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トリオルガノ シルヘミオキサン [R3SiO1/2] |
シロキサン [R2SiO2/2] |
シルセスキオキサン [RSiO3/2] |
シリケート [SiO4/2] |
耐熱性(難燃性)
一般の有機樹脂の炭素-炭素(C-C)結合エネルギーに比べ、シリコーンのSi-O結合エネルギーは約25~60%ほど高いため、高温でも分解しにくいことが知られています。
しかし、少なからずメチルやフェニルといった有機基を有していることから、形成された硬化被膜は、高温に晒されるとその部分が酸素と反応して熱分解、揮発しますが、その後はシリカ(SiO2)が残るため、有機樹脂よりも難燃性が高いです。
メチル/フェニル系シリコーンレジンの加熱減量曲線(空気中)
撥水性
シリコーンオリゴマーの硬化被膜は、有機樹脂より表面張力が低いことから、水接触角が高く、優れた撥水性を示します。
この表面張力の低さは、シリコーンの分子間力が低いことに起因しています。
耐候性
タイプAのメチル系シリコーンオリゴマーは、太陽光の波長領域の光を吸収しないため、太陽光の影響を受けることがほとんどありません。
一方、有機樹脂は、太陽光の波長領域の光を吸収するため、分解・劣化しやすいです。
シリコーンレジンの太陽光波長の吸収帯
製品ラインアップ
シリコーンオリゴマー(タイプA)は、あらかじめ硬化触媒を含有した一液タイプと硬化触媒を別に添加する二液タイプがあり、それぞれのメリットを生かして使い分けされています。
メリット | デメリット | |
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一液タイプ | ・触媒を配合する必要が無い ・初回評価しやすい |
製品ラインアップが限られており 配合設計の自由度が限定的 |
二液タイプ | 製品ラインアップおよび新規開発品が多く、 配合設計の自由度が高い |
触媒を配合する必要があるため 配合後の安定性評価が必要 |
一液タイプ(硬化触媒を含有)
*表中の製品名をクリックすると個別製品ページに移行します。
二液タイプ(硬化触媒を添加)
1.KR-500に別の製品を“添加”することで、硬化速度の調整や被膜の物理特性、被膜の表面性能を改良する方法
*表中の製品名をクリックすると個別製品ページに移行します。
*一液タイプの製品ですが、他のオリゴマー製品に添加することで各種機能を付与することが可能です
2.KR-500から別のシリコーンオリゴマー製品に“置き換える”ことで、硬化速度の調整や被膜の物理特性、被膜の表面性能、そのほかの特性を改良する方法
*表中の製品名をクリックすると個別製品ページに移行します。
信越化学工業株式会社 シリコーン事業本部 営業第二部
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