Q&A

硬化前のシリコーンゴムの試験方法

シリコーンゴムの試験方法について、何のためにどのような試験をするのか教えてください。
シリコーンゴムは、合成ゴムの仲間です。高温加硫のミラブル型シリコーンゴムと、室温または比較的低温で加硫ゴム化する液状シリコーンゴムに大別されます。試験は、シリコーンゴムコンパウンド(混合物)が設計通り製造されているかどうかをチェックするものです。
まず “ミラブル型” と “液状” について、簡単に説明してください。
ミラブル型とは、シリコーンゴムコンパウンドのうち、硬化する前の状態が天然ゴムや通常の合成ゴムの未加硫配合ゴムに類似していて、練りロール機あるいは密閉式の混合機などで可塑化・混合することができるものの総称です。液状とは、同じく硬化前の状態が液状またはペースト状のものの総称です。液状ゴムには、室温で空気中の湿気でゴム化するものもあります。
いずれの材料も、成形品を作るための前工程として、練ったり混合したりするわけですか?
そうです。チューブやカートリッジになっている一液型以外は、混合や練りが必要です。
硬化前の試験の目的と方法を教えてください。

硬化前の試験の目的は、設計通り製造されているかどうかと、使い勝手を調べることです。試験項目は (1) 粘度試験、 (2) 可塑度試験、 (3) 硬化性試験、 (4) タックフリー試験、 (5) 線収縮率試験、の5種です。

(1) の粘度試験の目的は、液状シリコーンゴムを練るときの作業性と加工性を評価することです。試験方法はJIS K 7177とJIS K 2220に基づき、「単一円筒回転粘度計を用いる方法」と「見掛け粘度試験方法」があります。

(2) の可塑度試験の目的は、ミラブル型の弾性限界以上の応力下での変形が、応力を除いた後で原型に戻らなくなる、その程度を調べることです。コンパウンドの素練りの良・不良の目安として、また硬化までの過程を見るうえで重要です。試験方法は、基本的に国際規格ISO7323に基づき、並行板可塑度計を使い、並行板に挟む試験片の大きさや荷重など、所定の条件でテストされます。

(3) の硬化性試験は、ミラブル型や熱硬化性液状シリコーンゴムは加熱成形されるため、温度と時間は重要な作業条件となります。この試験は硬化開始から終了までの材料の挙動を調べる目的で行われます。試験方法は、JIS K 6300に基づき、そのうち一般的な「振動加硫試験機による加硫試験」により、硬化時間と硬化の程度を計ります。

(4) のタックフリー試験は、湿気硬化型液状シリコーンゴム未硬化状態から、表面の粘性(タック)がなくなるまでの時間を調べる目的で行われます。シーリング材などに応用されている製品では特に可使時間や養生時間判断の目安として重要です。試験方法は、「指触法」または「鉛筆法」によります。指触法はガラス板上に未硬化の試料を平らになるように置き、エチルアルコールで清浄にした指先で表面に触れます。異なる場所でそれを繰り返し、指先に試料が付着しなくなるまでの時間(タックフリータイム)を計測します。鉛筆法は、試料を棒状にして鉛筆の芯を並行接触させる方法で、時間計測は同様に行います。

(5) の線収縮率試験は、ミラブル型や熱硬化性液状シリコーンゴムを金型の中で加熱硬化させたときに硬化によって収縮するため、成型品と金型の寸法誤差の度合いをあらかじめ知っておくことは、時間とコストの嵩む金型設計上とても重要です。特に高い成型寸法精度を要求される複製用途では事前情報として不可欠です。この試験方法には「シート法」と「円盤法」があります。シート法は所定寸法の試料と金型(正方形)を使用して、硬化後の相対する辺の中点を結ぶ二つの長さ(円盤法は円形金型を使用、相対する刻印間の長さ)を計測します。

このように、さまざまな角度から物性を評価する意義と目的があります。
つまり、用いる材料の用途に対応させて、最終製品になるまでの工程管理、品質管理上の要請に基づいた試験方法だということです。

Q&A一覧へ

ページの先頭へ