Q&A

接着とはどういうこと?

接着ということについて、説明してください。
たとえば、フライパンでチャーハンやタマゴ焼きをつくるときコゲついて、後でゴシゴシかき落とすという経験を誰でもしていると思いますが、この物と物とがくっつく現象を応用して、紙をデンプン糊でくっつけたり、金属やプラスチックを合成樹脂でくっつけたりしているのです。つまり、接着とは、ある物質とある物質の接触している面を接着剤が媒介して結合する現象のことを指しています。
接着剤と物質はどのように結合するのですか?
結合には、物質と分子と接着剤の分子の間に作用する引き合う力(分子間力)による場合、分子同士がからまり合う場合、物質の凹凸の中に接着剤が入り込み固まってクサビのような働き(投錨力)による場合などがあります。接着の現象は普通これらの働きが補完しあっていると言えます。
分子間力についてもう少し詳しく説明してください。
磁石のプラスとマイナスの関係と同じように考えることができます。つまり分子には正電荷の部分と負電荷の部分があって、物質の正電荷と接着剤の負電荷が引き合うということです。
投錨力による接着は物質によって可能なものとそうではないものとがあるのですか?
ふつう固体の表面はどんなに平らに磨いてもオングストローム(1/1千万mm)単位でみるとデコボコしています。ですから原理的には、物質と物質の表面をそのまま合わせても凸部の限られた部分しか接触しません。その部分だけを接着剤でくっつけても接着力は極めて弱いことになります。
表面が平滑なガラスなどは、接着剤の投錨力が働きそうもないので分子間力による結合をさせるほかないのですか?
ガラスの場合は確かに接着剤の投錨力は期待できません。実はガラスの場合は分子間力ではなくて化学結合で接着させています。ガラスの接着の仕組みの一例を挙げると、強化プラスチックに使われるガラス繊維は、樹脂との接着力を強めるためにビニルトリクロルシランを表面処理剤として用いられますが、処理剤分子の一部が加水分解して水酸基(-OH)を生じます。これがガラス表面のシラノール基(-SiOH)と反応してシロキサン結合(-Si-O-Si-)をつくりガラスと接着します。一方、分子内のビニル基(-CH2=CH-)は、樹脂と反応して化学結合により接着します。
一口に接着といってもさまざまなケースがあるのですね。
接着の仕組みは物質によって異なるため、接着剤の働きが問題になるわけですね。
そのとおりです。接着剤に要求される基本的な条件は3つあります。第1は容易に流動する液体であること。第2は固体表面の細かい凹凸によく流れ込む毛細作用をもつこと。第3は、最後に固定して一定の強さ、すなわち凝集力を持つこと。特に第2の毛管作用というのは、固体の表面全体をよくぬらします。この “濡れ性” が物質と接着剤の分子を互いに引き合う距離まで近づきやすくさせるので、重要なポイントです。
凝集力について説明してください。
凝集力は接着破壊に関係があるのです。簡単に言うと、液体や固体は、引っ張られたり捻じられたり、また熱や電流など外部からの力を受けた場合、物質が分子の構造や電荷の状態などを変化させずに、壊れまいとする力をそなえています。物質によってその限度が異なりますがこの力を凝集力といいます。接着後に強い力で接着面を引き剥がそうとする場合、・接着剤の破断 ・被着材の破断 ・接着界面の剥離 の3つのケースが考えられます。接着破壊のうち破断は、それぞれの凝集力の限度を超えたケース(凝集破壊)です。界面剥離は、いわゆる接着力(分子間力、投錨力、化学結合)が、相対的に弱いということになります。物質間の凝集力の差や接着の仕組みの違いなどはもちろんあるわけですが、せんじつめると、接着というのは分子間力によっているのだ、と言えるわけです。
ただし、物と物とをくっつける接着剤は、物質との相性が問題になりますから、さまざまな物質の種類に合わせて接着剤の種類も多くなるのです。さらに、接着剤そのものの働きや固まった後の強さも、その性能を決定する重要な要素になります。

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