Q&A

シリコーンと電気特性

シリコーンは電気特性が安定しているといわれていますが、何を基準にしているのですか?
物質は電気によってさまざまな影響を受けますが、それらの影響の度合いについて、一般的には (1) 誘電率(電気の流れやすさ)、 (2) 誘電正接(エネルギー損失の度合い)、 (3) 体積抵抗率(電気の流れにくさ)、 (4) 絶縁破壊の強さ(電圧の程度によって絶縁性が失われる限界)、などの基準で表します。これらはとくに絶縁体の絶縁性能を評価する重要な基準です。
「絶縁体に電気が影響を与える」という原理について説明してください。
絶縁体とはいえ、分子中にはプラスとマイナスの極性が不均一に存在しているのですが、全体としては電気的に釣り合った状態にあります。絶縁体にプラスの電極を近づけると、分子中のマイナス電子が電極の側に移動し、そのため反対側がプラス極性に変化します。このような状態になることを誘電分極といいます。
たとえば、流れのない水の中にいるメダカはばらばら方向に向いていますが、水が流れ出すと一斉に同じ向きになります。メダカは流れの力に押されて隊列を崩されまいとして、頭を上流に向けるわけですが、その状態に似た現象が起きるのです。メダカの動きがすばやいか、もたもたしているかによって、つまり、分極の程度によって電気特性にも違いが出てきます。
まず、誘電率について説明してください。
誘電率とは、電気の流れやすさといいましたが、分極のしやすさともいえます。コンデンサーの場合を例にとると、これは直流の極板(+、-)の間に絶縁体を介在させて、分極による蓄電の機能を持たせていますが、その蓄電の程度(電気量)は極板の面積と電解の強さに比例し、その比例定数となるのが誘電率です。例えば絶縁体の空気を1とする(比誘電率)と、紙/2~2.5、シリコーンオイル/2.60~2.75、雲母/5~8という値で、シリコーンオイルの比誘電率は、空気、紙についで小さいことがわかります。
誘電率の値が小さい方が、絶縁性能が高いということです。
誘電正接について説明してください。
誘電正接は、交流電界中でのエネルギーの損失の度合いを示します。この値が大きいほど絶縁体の分子が揺さぶられ、その摩擦抵抗も大きくなって発熱をもたらします(放熱エネルギーと充電エネルギーの差が生じる)。逆流を繰り返す水の中で、メダカが整然とすばやく向きを変えられず、流れの力に負けてメダカ同士をぶつかり合い混乱する状況を想像してください。
流れが極端に強いとか、めまぐるしく変わるとか、つまり電圧や周波数や温度の程度によって、絶縁がおぼつかなくなるものもあるということです。
体積抵抗率について説明してください。
体積抵抗率は電気に対する抵抗力のことですから、絶縁のためには値が大きい方がよいわけです。
絶縁破壊の強さについて説明してください。
絶縁破壊の強さは、絶縁体にかける電圧をどんどん高めていって、文字通り絶縁破壊(分子の結合が切れて自由電子が大量発生し、導電状態になること)となるときの電圧の値で示されます。
シリコーンの電気特性について、評価してください。
絶縁体として各種シリコーン製品の基礎原料でもある代表的なシリコーンオイル(ジメチルシリコーン)についていえば、温度や周波数による物性変化が非常に小さく、とくに幅広い温度帯域で安定した電気特性を発揮します。このことは、シリコーンの基本特性である耐熱性・耐寒性を反映しているともいえますし、化学的安定性なども備えているため、全体的に耐久性に優れた絶縁材料として、信頼性が高いといえます。
絶縁性について少し詳しく知りたいのですが、まず絶縁とはどういうことですか?
電気を通す物質を導体といいますが、反対にほとんど電気を通さない物質を絶縁体といいます。その中間の物質が半導体です。絶縁というのは、電気を伝えにくい性質のことだといえます。
絶縁体にはどのようなものがあるのですか?
陶磁器やガラスなどがよく知られています。家電製品の絶縁材として昔からなじみのあるものでは雲母(マイカ)がありますし、一般的なプラスチックも同様です。ちなみに導体では銀、金、銅、鉄、鉛などがよく電気を通します。また半導体としてよく知られているのがシリコン、ゲルマニウムなどです。
物体が導体であったり、絶縁体であったりするのはなぜですか?
電気が流れる現象には、電解液中や空気中のイオンによる場合もありますが、ここでは固体のケースに限定して説明しましょう。物質は原子核とそれを取りまくいくつかの電子によって成る原子の組み合わせ(分子)で構成されています。基本となる原子の原子核にはプラス電気を帯びた陽子があり、原子核のまわりにはマイナス電子を持つ電子(原子の種類によって電子の数は異なる)があって電気的に釣り合った状態にあります。電気を通すかどうかは、電子が動きやすいかどうかによって決まります。プラス陽子群に対してマイナスの電子が離れれば陽子群のプラス極性の割合が強くなり、反対に他の物質からマイナスの電子が入ってくれば原子全体はマイナスの極性になります。これは電子の移動が導電性をもたらすことを意味しています。たとえば、ダイヤモンドと黒鉛は、どちらも炭素原子から成っていますが、ダイヤモンドは絶縁体で黒鉛は導体です。ダイヤモンドを構成する炭素原子が電子をしっかり束縛して放さない(共有結合結晶体)のに対して、黒鉛の場合は、電子の動き回る海の中に原子が浮かんでいるような状態で、結合がゆるく電子の活動が活発(自由電子)なため電気を運びやすいのです。
原子の結びつきの強さが電気の通りやすさを左右するということがわかりました。ところで、よく絶縁体が静電気を帯びるといいますが、それはどういう現象なのですか?
一般に、物体は摩擦によって静電気を帯びます。たとえばプラスチックの下敷きの薄紙を擦り合わせて離すと、薄紙は下敷きの方へ引き寄せられ、擦り合わせた薄紙どうしは、斥け合います。この現象は、下敷きと薄紙には異なった符合(プラス、マイナス)の電気が生じるためで、これを静電気といいますが、摩擦によって物体が局部的に温度上昇して、原子が激しく揺さぶられ、そのエネルギーによって飛び出した一方の電子が他方の物体に付着するときに電気が生じるのです。
シリコーンは、電気絶縁性に優れているのですか?
シリコーンは一般のプラスチックやゴムと比較して、広い温度変化を対象とした場合にも電気絶縁性に優れているといえます。なぜなら、一般のプラスチックが炭素結合を骨格としているのに対し、シリコーンはシロキサン結合(Si-O-Si)を骨格としており、炭素結合より原子間の結びつきが強く、電圧や熱などのエネルギーによって破壊されにくい(つまり電子が動きにくい)ためです。このような特長を生かしてシリコーンゴムが耐熱用途の電線に、シリコーンオイルが新幹線トランスの絶縁油などに使用されています。

Q&A一覧へ

ページの先頭へ