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光触媒とシリコーン

最近よく耳にする光触媒とは何ですか?
光が当たることによって作用する触媒のことで、日本人化学者本多健一氏、藤島昭氏によって発見され、「本多・藤島効果」として世界に広く知られている酸化チタン光触媒の原理のことを一般的に光触媒と言っています。この原理は酸化チタンの表面に紫外線が当たると酸化反応が起き、表面にある有機物を酸化・分解したり、表面が親水化したりするというものです。
酸化チタンが持っている効果なのですね。
酸化チタンはもともと白色の塗料用無機顔料として広く使用されていました。この無機顔料の用途ではこうした酸化反応は塗料の劣化を早めるなど問題だったのですが、そのマイナス面を積極的に活かし新たな親水防汚システムや抗菌システムが検討されるようになったわけです。現在、酸化チタンより優れた光触媒機能を持つ物質は見つかっておらず、酸化チタンを表面コーティング用に使いこなすための技術が求められています。
光触媒によってどのような効果が得られるのですか?
光触媒の強い酸化作用により、防臭、殺菌、抗菌、防汚、有害物質の除去などの効果があります。また、光によってできたOH基で表面が濡れて超親水性になるため、水がかかっても水滴になってとどまらずにすぐに流れてしまいます。そのため、酸化によって分解された汚れが雨などで流され防汚効果が持続するという効果もあります。
どのような使われ方が考えられますか?
例えば、建物の外壁や窓ガラス、道路標識、自動車の窓ガラス、ミラーなどに塗布して汚れを防止したり、高速道路の遮音壁に塗布してNOxを分解したり、浴室・トイレなどのタイルや鏡に塗布することで汚れを防止するだけでなく、カビの発生を防いだり臭いを分解したりなど、さまざまな用途が考えられます。
光触媒コーティングにはシリコーンが有望と言われていますね。
従来は、スラリー状態の光触媒をセラミックやガラスなどの無機物に焼き付け塗装するのが一般的でした。無機物に使う場合は、シリコーンは必要ありません。光触媒は有機物を分解してしまうため、有機材料の基材に光触媒コーティングをする場合に、バリア層としてアンダーコートが必要で、そこにシリコーンが使用されています。
光触媒のコーティング用にシリコーンが適するのはなぜですか?
シリコーンはもともと無機的な性質があり、酸化チタンによって分解されにくいためです。例えば、アクリルやウレタンなど他の有機系コーティング材では耐えられないことがわかっています。
塗料化も検討されているのですか?
最近は粉末状の光触媒が市場に出ており、塗料に混ぜて光触媒機能を持たせることが検討されています。そのバインダーとして注目されているのがシリコーンです。塗料化すれば、すでに建築済みの建物などであっても後から現場施工によって処理が可能となるなど、光触媒の市場も一層大きく拓けるようになるでしょう。
バインダーとして考えられるのはシリコーンだけですか?
光触媒の酸化に侵されないという条件を考えるとシリコーンまたはフッ素が考えられますが、塗料化しやすいという点などからシリコーンが最も現実的なバインダーと言えます。
ほかにシリコーンのメリットはありますか?
シリコーンは選択肢を多様に持っているところがメリットです。シリコーンレジン(ワニス)やアルコキシオリゴマー、溶剤型、エマルジョン型など各種性状があり、硬化方式も常温硬化、加熱硬化など用途に合わせて最適なものを選べるという優位点があります。
光触媒の今後の展開はどうですか?
塗料化に向けてさまざまな検討が進められているほか、酸化チタン以外の光触媒も検討されるなど、活発な研究が進められています。
一方、光触媒市場の健全な発展のためには光触媒の試験方法の標準化が不可欠であり、光触媒製品フォーラムに標準化部会が設けられ、その制定に向けて取り組んでいます。

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