Q&A

オイルについて

シリコーンオイルの中には、水への溶解性がよいものもあるようですが、シリコーンオイルは水に溶けるのですか?
ジメチルシリコーンオイルなどは水に溶解しませんが、ポリエーテル変性シリコーンオイルの中には水に溶解するものもあります。ジメチルシリコーンオイルであっても乳化剤を加えることにより、水に分散させることができます。ただし、シリコーンオイルは基本的には水には溶けないと解釈されています。
それではシリコーンオイルがよく溶けるもの、溶けないものにはどのようなものがあるのですか?
「似たものには似たものがよく溶ける」というようにシリコーンオイルは化学構造上、極性の小さい物質であるため、一般に溶解度パラメーター(SP値)の小さい無極性溶剤、例えば芳香族系溶剤(例:トルエン、キシレン)には非常によく溶解します。逆に、極性で溶解度パラメーターが10以上の溶剤(例:メタノール、エタノール、水)にはほとんど溶解しないという性質があります。
「似たものには似たものがよく溶ける」ということは、シリコーンオイル同士はよく溶けると考えてよいのですか?
基本的にはその通りです。同じジメチルシリコーンオイルでも分子量(粘度)の小さいものほど、溶解性を増す性質があります。0.65cStなどはそれ自身が溶剤の代替として使用されることもあるほどです。しかし、シリコーンオイルの溶解性はフェニル基の含有量にも大きく左右され、フェニル基含有量の少ないメチルフェニルシリコーンオイル(5モル%以下)とジメチルシリコーンオイル(100cSt以下)とはよく溶解しますが、フェニル基含有量が高くなったり、高粘度のメチルフェニルシリコーンオイルとジメチルシリコーンオイルとは溶解せずに白濁状になることもあるので注意が必要です。
エマルジョン製品のように溶けないはずの水にシリコーンオイルが溶けているのはなぜですか?
溶けているわけではなく、乳化剤を加えることで分散させているのです。乳化剤には主に界面活性剤が使用されます。これは水と結びつきやすい親水基とシリコーンオイルのようなもの(疎水性のあるもの)と結びつきやすい疎水基の相反する性質をあわせ持った物質で、反発する二つの境界面によく吸着されて界面のエネルギー(表面張力)を低下させる働きを持っています。つまり、界面活性剤は水とシリコーンオイルの仲立ちをしているのです。この界面活性剤はシリコーンオイルを変性することでも作ることができます。
この技術はどのような用途に応用されているのですか?
繊維処理剤、化粧品、離型剤、剥離紙、消泡剤、塗料など、幅広い用途に応用されています。いずれもシリコーンオイルの特性を均一に、しかも、より効率よくいきわたらせること、そして環境に優しい製品を作ることが主な目的です。
シリコーンオイルの粘度を調べる良い方法はありませんか?
たとえサンプルの量がわずかでも、ジメチルポリシロキサンの希薄溶液粘度から粘度を求めることができる便利な方法があります。

● 計算方法
以下の順序で行ってください。

  1. 1g/100ml濃度のジメチルポリシロキサンのトルエン溶液を調整し、比粘度ηsp(25℃)を求めます。
    η sp=(η/η0)-1  ※η0:トルエンの粘度、η:溶液の粘度
  2. 次に、η spをHugginsの関係式に代入して、固有粘度〔η〕を求めます。
    η sp=〔η〕+K'〔η〕2  ※K':Hugginsの定数 K'=0.3(〔η〕=1~3のとき適応)
    【参考文献】中牟田、日化、77 588[1956]
  3. 〔η〕をA.Kolorlov等の式に代入し、分子量Mを求めます。
    〔η〕=0.215×10-4M0.65
    【参考文献】Doklady Akad. Nauk. U.S.S.R. 89 65[1953]
  4. 最後にMをA.J.Barryの式に代入して、オイル粘度を求めます。
    logη=1.00+0.0123M0.5
    【参考文献】J.Appl.physics.17.1020[1946]
シリコーンオイルの粘度を調整することはできますか?
信越シリコーンオイルにはさまざまな種類の標準粘度品があります。しかし希望する粘度の製品が手元にない場合は、粘度の違う2つの製品を混合して最適な粘度のシリコーンオイルをつくりだすことができます。

● 調整方法
下記グラフを用います。(混合するシリコーンオイルはできるだけ粘度の近いものを使用し、それぞれのオイルの割合は等しくない方向にもっていく[グラフの重量%軸の両端に近い方で用います]ようにしてください。)

縦軸に動粘度を対数目盛でとり、横軸に使用量(重量%)をとります。目盛にない1万mm2/s(104)以上のときは、適宣乗数を下方に平行移動させて使用します。このとき、縦軸の平行移動だけで上下の使用目盛には変動なく出てきた値(重量%)は、そのまま使うことができます(使用例2参照)。また、使用量(重量%)目盛は、左側にとったオイルの使用量(重量%)は上の目盛を読み、右側にとったオイルの使用量は下の目盛を読みます。逆に使用してしまうと、全く異なった粘度品ができてしまいますのでご注意ください。

使用例1: 標準粘度品1,000mm2/sと300mm2/sを混合して600mm2/sのオイルをつくる場合

  1. 左側に1,000mm2/s(1×103)の目盛をとり、右側に300mm2/s(3×102)の目盛をとって両点を直線で結びます。
  2. 600mm2/s(6×102)の目盛を通る水平線と先の直線との交点から直線を下ろし、上・下の標準粘度の使用量(重量%)目盛を読みます。
  3. すなわち300mm2/sを42.5重量(下の目盛から)、1,000mm2/sを57.5重量%(上の目盛)を混合すると600mm2/sの粘度品が得られます。

使用例2:標準粘度品30万mm2/sと5万mm2/sを混合して20万mm2/sのオイルをつくる場合

グラフには、30万および5万の目盛がありませんので、座標を移動します。

  1. まず左側の1×103台の目盛3のところを30万mm2/sの目盛とし、右側の1×102台の目盛5のところを5万mm2/sとします。そのことにより30万mm2/sは3,000mm2/sのところ、つまり3×103の目盛となり3×105(30万)を102(3×105÷3×103=102)だけ座標移動したことになり、また5万mm2/sもやはり102(5×104÷5×102=102)だけ座標を移動したことになります。
  2. 両点を直線で結び、20万mm2/sつまり2×103(102座標を移動したため)の目盛を通る水平線と先の直線との交点から垂線を下ろし、上・下の標準粘度品の使用量(重量%)目盛を読みます。
  3. 30万mm2/sは上の目盛を読んで77重量%、5万mm2/sは下の目盛を読んで23重量%とでます。

※ 縦軸(粘度軸)は対数目盛であり、上下に移動するのみで自由に使え、標準粘度品の使用量(重量%)目盛はそのまま使用できることを利用します。

左側目盛にとった標準粘度品の使用量(重量%)

成型品の表面に付着したシリコーンオイルを除去したいのですが・・・?
シリコーンオイル(ジメチルシリコーンオイル)を除去するには、いくつかの方法があります。
  • 溶剤による洗浄

    シリコーンオイルを溶解する溶剤(下記リストを参照)を用いて洗浄してください。なお、プラスチック類、特にスチロール、アクリル樹脂等は耐溶剤性が悪いので溶剤の選択には十分ご注意ください。

  • 洗剤による洗浄

    完全に取り除くには手間がかかりますが、中性洗剤、洗剤入り磨粉等を用いてブラシやウェス等で十分にこすります。このとき、中性洗剤の濃度が低いと洗剤がはじかれて洗浄に手間がかかりますから、できるだけ高濃度でご使用ください。

参考:KF-96-100csの各種溶剤との溶解性

シリコーンオイルの脱水処理法を教えてください。
脱水には加熱、真空加熱、乾燥不活性ガスの吹き込み、または脱水剤を用いる方法などがあります。
  • 加熱による方法

    水分のため半透明に濁っている場合や、100ppm以下まで水分を取り除くときは、減圧下で100℃~150℃に加熱するか、あるいは加熱しながら乾燥した不活性ガスを吹き込む方法で脱水することができます。加熱するときは、できるだけ油の層を薄くすると効果があります。冷却後、濁りがなくなれば、脱水されたことになります。

    また、電気絶縁油として高い耐電圧を要求されるときなどは、減圧下での加熱や加熱しながら不活性ガスを吹き込む方法等で脱水してください。減圧下で加熱のときに静置しておくと脱水速度が遅くなりますから、油層をできるだけ薄くすることが必要です。このとき、撹拌や振とうを行うことで、脱水速度を早めることができます。

  • 脱水剤(シリカゲル)を用いる方法

    シリコーンオイルに多量の水が混入して容器の底に水が溜まっていたり、白く濁っているときは脱水剤を用いて簡単に脱水することができます。
    水玉状の水を別容器に取り除いたあと、完全に乾燥したシリカゲルを投入して、強く撹拌したり、振とうを行って完全に透明にしてください。脱水が終ったら静置して、シリカゲルを沈降させ、上澄みのシリコーンオイルを用います。

ガラス類等のはっ水処理剤として、焼き付け処理を施す際の注意点を教えてください。
まず、シリコーンオイルは熱酸化安定性に優れているため、焼き付け処理を行う場合は、300℃程度の高温処理が必要です。また、その他にもいくつかのポイントがあります。
  • 粘度

    一般的にはっ水処理用には、100~500mm2/sの粘度が適しています。

  • 塗布厚、濃度、希釈剤

    塗布厚は、表面にシリコーンが一様にいきわたる程度が最適。ガラスは2~5%、セラミック、陶磁器は3~7%の濃度を目安にしてください。(希釈剤は、下記リストをご参照ください)

  • 焼き付け方法

    塗布した基材(処理物)は、焼き付ける前に風乾、もしくは50~70℃の温度で加熱乾燥させてください。これは溶剤を完全に除去するために行います。焼き付け条件は、200~350℃で5~20分ですが、被処理物により異なります。300℃、5分を標準として最適条件を前期温度と時間の範囲でさがしてください。

    また焼き付け炉は加熱器が赤熱していない状態が好ましく、屋外に排気口を取り付けるようにしてください。

  • 被処理物の洗浄

    被処理物の表面は、良く洗浄してください。一見、清浄に見えるガラスなどでも、300℃近い温度をかけると付着物が炭化して着色してしまいます。また、被処理物の表面が汚損しているとシリコーンオイルの希釈液が一様に塗布できなくなることがあります。このため洗浄は、水(石けん水などを用いるときは、後の水洗いも十分に行ってください)、あるいは溶剤類で入念に行ってください。

  • その他

    被処理物の表面の状態によっては、処理液がはじかれることがあります。このようなときは、溶剤を変えるか、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノールなど)を若干加えてみてください。
    焼き付け炉で希釈剤に引火性のある溶剤を用いる場合は、赤熱する加熱器の使用を避ける必要があります。

    また、塩素化溶剤が残留したままのものを焼き付け炉に入れると、溶剤が分解して有害ガスが発生する恐れがあります。他の溶剤が残留していると爆発の危険性がありますから、焼き付け炉は密閉しないでください。

※ 信越シリコーンの中でガラス類などのはっ水処理剤として使用できる製品は、KF-96、KF-99、KS-702、KS-703、KS-705F、KM-722M、KM-740、KM-780、KM-782、KC-88、KC-89、KR-251、KR-252、KR-253、KR-282、Polon Tなどがあります。

参考:KF-96-100csの各種溶剤との溶解性

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