Q&A

放熱シリコーンゴム加工品について

熱伝導シートとは何ですか。
熱伝導シートとは、熱伝導性を持つゴム加工品で、発熱部と冷却部(ヒートシンク)の間にはさみこむことで熱を伝えやすくするシートです。
主に熱抵抗(熱の伝わりにくさ)を下げる目的で使用されます。
また、必ずしも冷却目的で使用されるわけではなく、加熱のために使用されることもあります。
熱伝導シートと放熱シートとは違うのですか。
一般的に放熱シートとは放熱用の熱伝導シートを指しており、「放熱シート」と「熱伝導シート」は同義と捉えられます。
放熱材料にはどのような種類がありますか。
液状材料としては、液状硬化型ゴムや硬化をせず粘性を維持する液状グリースがあります。
加工品としては、高硬度シート、キャップ、チューブ、低硬度パッド、フェイズチェンジシート等のタイプがあります。
放熱シートの一般グレードを教えてください。
高硬度シート「TC-TAシリーズ」と 低硬度パッド「TC-CAシリーズ」があります。
高硬度シート、低硬度シート(パッド)の使い分けについて、教えてください。
確実な絶縁が必要な場合、例えばトランジスタなど高電圧部品の絶縁を主目的とする場合には、高硬度品をお勧めします。高硬度品ではシートのほか、キャップやチューブなどで沿面距離を抑える設計も可能です。一方、CPU・LSIの放熱や、高さの異なるチップを一枚のシートで覆う、基板の裏面から熱を逃すなど、低応力や密着性が必要とされる場合は低硬度品が最適です。
放熱シートだけでもたくさんの種類がありますが、なぜ多くの種類があるのでしょうか。
主目的の違い(絶縁性重視、放熱性重視)、ワーク形状の違い(平ら、凸凹)、実装方法の違い(手作業、自動化)、信頼性重視やコスト重視の用途等に幅広く対応するため、豊富なラインアップをご用意しています。
グリースと低硬度シートの使い分けについて教えてください。
グリースは加工品(シート)に比べ加圧による薄膜化が可能です。また、接触熱抵抗が極めて小さいため、高い放熱性能を発揮します。反面、脱泡等の管理が多く使いこなすにはある程度熟練が必要です。自動実装が容易で大量生産に向いています。
対して低硬度シートはグリースに比べ放熱性能は劣りますが、挟みこむだけで使用が可能で、少量多品種の製造に向いています。挟みこむことで構造間に一定の距離を取ることができ絶縁性の担保も容易であることから、絶縁用途で用いられる場合シートを採用するケースが多いです。
製品にあまり圧力をかけられないのですが、放熱シートで低応力タイプの製品はありますか。
低応力タイプとしては低硬度放熱シート(パッド)があります。TC-CAシリーズ、TC-SPシリーズを推奨します。
熱伝導シートにはどのような材質がありますか。
アクリル系やシリコーン系が一般的です。アクリル系は安価ですが、シリコーン系に比べ長期信頼性に劣ります。
最近、他社で「非シリコーン放熱シート」という製品を目にしますが、シリコーンゴム品との違いを教えてください。
シリコーン放熱シートが、非シリコーン(有機合成ゴム・例:アクリルゴム)放熱シートに比べて大きく優れている点は、耐熱性と長期信頼性です。シリコーンが200℃付近(180℃程度)までの耐熱性を持つのに対して、非シリコーン系では100℃を超えると劣化が進行するものがあり、また100℃以下の温度でも長期の信頼性でシリコーンと比べると明らかに劣ります。シリコーンはガラス転移点も低いので、耐寒性にも優れます。さらにシリコーンは温度や周波数を変化させても電気特性の変化が小さく、絶縁物質に不活性のため高温時・低温時の電気特性に優れます。仮に電気的に劣化が進んで分解しても、最終的には無機質のシリカが残るため耐アーク性・耐トラッキング性が良く、高電圧部分の絶縁材料として適しています。ほかにも難燃性に優れるなど、さまざまな特長があります。
熱抵抗とは何ですか。
熱抵抗とは、熱の伝わりにくさを表す指標で、この値が低いほど熱が良く伝わることになります。
熱抵抗Rは式でR = R0+ Rc = L/λA + Rc
(R0:TIMの熱抵抗、 L:厚み、 λ:TIMの熱伝導率、 A:面積、 Rc:接触熱抵抗) と表されます。
熱抵抗を下げるためにはどうしたらよいですか。
熱抵抗を下げるには次の4つの方法があります。
(1)放熱材料の厚みを薄くする、(2)放熱材料の面積を大きくする、(3)熱伝導率の高い放熱材料を使用する、(4)接触熱抵抗を下げる(界面に追従しやすい密着性の高い放熱材料を使用することで、より接触熱抵抗は下げることができます)。
熱伝導率と熱抵抗の違いを教えてください。
「熱伝導率」は物質固有の値であり、厚みに無関係で、物質内部における熱移動のしやすさを示します。
熱伝導率の値が大きいほど、物質内を熱が伝わりやすいということになります(単位:W/m・K)。
一方、「熱抵抗」は放熱材料の実装時における熱の伝わり難さを表す指標で、数値が低いほど熱が伝わりやすいです(単位:K/W)。
仮に「熱伝導率」が高くても、発熱部・冷却部との密着が悪く、放熱材料が厚く、面積が狭ければ「熱抵抗」が高くなり、逆に「熱伝導率」が低くても、密着が良く、材料を薄く面積を広くできれば「熱抵抗」を小さくすることができます。
このように「熱抵抗」は、放熱シートを使用した場合の種々条件を加味した総合的な放熱特性を表す値です。
熱抵抗K/Wとcm2・K/Wの違いについて教えてください。換算は可能ですか。
K/Wは面積を考慮しない熱抵抗、cm2・K/Wは単位面積あたりの熱抵抗です。
実機モデルでの熱抵抗評価においては、熱抵抗=(発熱部と冷却部の温度差)/印加電力での熱抵抗評価がよく行われます。この場合、熱抵抗の値はK/Wとなります。
規格に基づく熱抵抗測定においては、単位面積あたりの熱抵抗cm2・K/Wが単位として用いられることが多いです。
単位面積あたりの熱抵抗から、実機面積での熱抵抗を予想する場合、単位面積あたりの熱抵抗を、実機面積で割れば予想が可能です。ただし、実機とは接触状況や使用温度、圧縮厚み等が変わる可能性があり、注意が必要です。
ゴムの熱伝導率と等価熱伝導率にはどのような違いがありますか。
実際の製品は複数の層から構成される複合材であったり、接触熱抵抗を有しています。
ゴムの熱伝導率は、製品に使用しているゴム材の熱伝導率を示しており、製品品質保証の基準および製品選択時の指標となります。一方で、等価熱伝導率は実使用時の接触熱抵抗を含む熱伝導率のことを指します。
放熱シートのカタログにある熱伝導率は接触熱抵抗を含んでいますか。
ISO 22007-2に準拠した方法で測定した熱伝導率は材料自体の熱伝導率を測定できますので、接触熱抵抗を含んでいません。ASTM D5470に準拠した方法で測定した熱伝導率も、カタログ記載の熱伝導率は計算により接触熱抵抗を除去していますので、接触熱抵抗を含まない熱伝導率となります。
低硬度放熱シートはどのくらい圧縮して使用すればよいですか。
低硬度シートにおいては、接触熱抵抗低減のため、20~30%程度の圧縮を推奨しています。
低分子シロキサンとは何ですか。カタログに低分子シロキサン量の記載がありますが、∑ D3-10とはどのような意味ですか。
低分子シロキサンとは、分子量が小さく、揮発性を有しているシロキサン結合(-Si-O-Si-)を持った有機化合物です。
揮発性の低分子シロキサンは、シリコーンポリマーの重合時に副生するものです。低分子シロキサンを代表し、その指標となるのが、Dnと呼ばれる環状シロキサンです。シリコーンポリマーのSi原子に有機基が2個付いた2官能性基をD単位と呼び、SiO(CH3)2の結合量により、D3、D4等と表記されます。特にD3~D10の総量はシリコーンの品質基準の指標とされているため、総量の∑ D3-10がカタログに記載されています。低分子シロキサンを、完全に除去することは工業的には困難ですが、現在は、シリコーンの製造工程で低分子シロキサンを高温減圧留去しており、その存在量を大きく低減することに成功しています。
低分子シロキサンはどのような問題を引き起こしますか。[接点障害について]
低分子シロキサンは、以下に挙げる条件が複合的に満たされたときに、電気接点へのシリカの堆積による接点障害を引き起こす可能性があります。
  • 低分子シロキサンが揮発し、蒸気となっている
  • 系が閉鎖系であり、蒸気濃度が高まっている
  • 電気スパークエネルギーが発生している
言い換えれば、上の3条件が満たされていなければ、低分子シロキサンによる接点障害が発生する可能性は、ほとんどないことが種々実験により示されています。
シリコーンの製品はリレー部での使用はできないのでしょうか。
前述した3条件が満たされたとしても、接点障害が発生する負荷条件は、極めて限定的であることが実験により示されています。低分子シロキサンを原因としたトラブル発生の負荷領域は、直流の数Vから数10V、電流は数100mA以下の領域に集中しています。このような限定された条件以外において、リレー部近傍でのシリコーン製品の使用に問題はありません。
低分子シロキサンをどのくらい含有していますか。
アセトン抽出法による低分子シロキサンの検出量は一般的な高硬度シートで数十ppm以下、一般的な低硬度シートは300ppm以下です。
実装を模したヘッドスペース法による150℃x30min条件での検出量は、高硬度シートで検出限界以下、低硬度シートで10ppm程度と非常に少量です。
難燃性UL規格「V-0」とはどのような規格でしょうか。
UL94という規格におけるV試験:20mm垂直燃焼試験の結果に基づく難燃レベルです。
試験片(125±5×13±0.5×t mm)をクランプに垂直に取付け、20mm炎による10秒間接炎を2回行い、その燃焼挙動によりV-0, V-1,V-2, Notの判定が行われます。
V-0は最も難燃性の高いレベルであり
  • 各試験片の燃焼時間:10秒以下
  • 5本の合計燃焼時間:50秒以下
  • 各試験片の燃焼+グローイング時間 30秒以下
  • クランプまでの燃焼、滴下物による綿着火 なし
の基準を満たす自己消火性材料に付与されます。
カタログでは最高使用温度が180℃となっていますが、さらに高い温度になるとどうなりますか。
一般的なシリコーンの耐熱温度は200℃ですが、放熱材料は使用するフィラーの影響を受け、耐熱温度が低くなるケースがあり、一般的な耐熱温度を180℃としています。長時間、180℃を超える温度にさらされると、シートの脆化が起こり、放熱性能・絶縁性能が低下する場合があります。ただし、シリコーンは熱可塑性樹脂ではなく熱硬化性樹脂ですので、融解等は発生しません。高耐熱性の製品もありますのでご相談ください。
絶縁破壊電圧と耐電圧にはどのような違いがありますか。

絶縁破壊電圧:短時間破壊法
絶縁破壊電圧とは、原則として電圧を0から一定の速度(平均10~20秒で絶縁破壊が起こる速度)で上昇させたとき、絶縁破壊が発生する電圧のことです。

耐電圧:段階破壊法
耐電圧とは、絶縁破壊電圧の40%の電圧を20秒印加し、規定に従って順次電圧を上げ、20秒印加しても破壊されないもっとも高い電圧のことです。
トラッキングへの耐性はありますか。
シリコーン放熱シートは比較トラッキング指数 (comparative tracking index; CTI) が600V以上の実力を有しており、ほとんどの製品でUL認証を受けています。
製品の寿命は何年くらいですか。
使用環境によるため一概には言えませんが、製品の中には150℃/30,000時間の信頼性データを取得しているものもあります。
経験則である10℃2倍速を適用した場合、100℃環境における寿命は約110年です。
オイルブリードとは何ですか。また、どのように起こるのですか。
材料に含まれるフリーオイル分が滲みでる現象をオイルブリードと呼称しています。使用期間や使用環境(圧力、温度等)の影響を受けます。また、被着体の表面粗さが粗い場合や、細かいスジがある場合、毛細管現象によりオイルブリードが促進されることがあるため、注意が必要です。
セパレータの剥離が上手くいきません。剥しやすい方法を教えてください。
セパレータの角(エッジ)をつかみ対角線上に180度の角度に剥離を行っていただくと剥離が容易です。
また、特殊対応とはなりますが、剥離が容易なセパレータへの変更も検討可能です。
ハンダリフロー工程に通すことはできますか。
250℃の温度環境下でも、数分程度の短時間であれば放熱シートが急速に劣化することはありませんので、ハンダリフロー工程に耐えることは可能です。しかし、シートの高硬度化などの小規模な物性変化が発生する可能性があります。
半導体製造装置内での使用に問題はありませんか。
忌避される元素につき開示いただければ、適用可能な材料の推奨や新規開発が可能です。
輸出に対する規制はありますか。
輸出貿易管理令の規制対象品については、該否判定が必要となるケースがあります。
他社製品との性能比較はどこを見ればよいですか。
仮に同じ測定基準に準拠していても、同じ測定環境で測定されたものではないデータの比較はあまり意味がありません。
実製品のサンプルで比較試験されることをお勧めします。
放熱シート単体(ヒートシンクおよび筐体接触なし)で使用した時に放熱効果はありますか。
放熱シートは発熱部から冷却部に熱を伝える役割で使用されており、熱容量も小さいため、放熱シート単体で使用しても放熱効果はほとんどありません。

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